腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
それからは純も大人しく席に座っていた。目の前の男の言いなりになるのは不本意極まりなかったが、大事な折り畳み式携帯を逆パッカンされそうになったら誰だって逆らえないだろう。


「恋人の振りはもちろん調査の一環だよ?目標により近づく為のね。君も最初に言ってたように、ある現場の証拠を収める時とか、ね?」

「現場って……やっぱり浮気……ですか?」

「うん。結構多いんだよ、浮気調査の依頼が。まぁ、つまりそうゆうこと。君の期待に添えなくて残念だけど」

「いえ、全然全くこれっぽっちも期待してませんからあしからず」


むしろ恐怖したわ。

でもあれ?と、純は何か引っ掛かった。それなら益々自分では不釣り合いではないか?癪だけど、こいつは本当に顔だけ!は良いのだ。


「あの~…なんでわたしなんです?あなたは喋らなきゃかっこいいですし、もっと美人な人を騙かして侍らせるのも簡単じゃないですか?」

「……………君も言うね」

「え?なんのことです?」

「……無自覚か」


余計に質(たち)が悪いな。という泉流の呟きは、どうやら純の耳には届かなかったようだ。
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