腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
「何怒ってるんですか?」


純から放たれた疑問に女は一瞬呆気に取られたが、すぐに気を取り直して言った。


「あたしたちはそこの彼に用があるの!邪魔してんじゃないわよブス!」

「ブ、」


ブスぅぅう!?と、純は多大な衝撃を受けた。なんで初対面の女の人にそんなこと言われなければならないのか。


(これだから顔の良い男は疫病神なんだ!)


キッと泉流を睨むと、彼は口を手で覆って肩を震わせていた。……あれは絶対笑ってるに違いない。

プツンと、純の頭の中で何かが切れた。

ガシッと無言で女の手を掴むと、無理やり襟首から引き離す。


「な、なにす……」

「…………天宮さん」


地を這うような声音が女の台詞を遮る。ゾッとして固まる彼女らとは反対に、泉流は笑みを崩さないまま首を傾げた。


「なぁに?」

「今すぐにこの人たちを蹴散らして下さい。じゃないとわたしは、もうあなたの言うことは一切聞きません」

「ふぅん?いいの?色んなことバラしても」


にやにやと訊いてくる泉流に、純は据わった目のままハッと鼻で笑った。
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