腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
「イヤ!離して!わたしは浮気なんかしてないわ!」


泉流はギョッとし、つい掴む力も緩めてしまった。その隙を逃す純ではない。すかさず距離を取る彼女に、泉流はやや焦りながら「待って!」と叫ぶ。


「あのさ、君、何か勘違いしてない?浮気ってナニ?」

「え?浮気調査じゃ…?」

「ない」


キッパリ否定してから彼はガシガシと頭を掻く。先程の台詞のせいで、周りの視線が突き刺さるのを感じていた。


「ちょっと場所変えようか。ああ、そこの喫茶店がいいな。大丈夫、もちろん僕の奢りだからさ」

「いえお構いなく」

「そう言わないでよ。君に大事な話があるんだ」

「わたしにはありません」

「……チッ」

「舌打ち!?」


綺麗な顔してなんて人だ!

益々警戒心を強めた純が、再び逃亡を試みようとしたその時。


「これ、なぁんだ?」


楽しげな声と共に掲げられたそれに、ピタリと純の動きが止まる。いやだって、






「わたしの財布ぅぅう!」
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