腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
いつの間に鞄から抜き取ったのだろうか。返してと手を伸ばすが、彼はしてやったり顔で喫茶店を顎で指す。


「付き合ってくれたら返すよ。これは人質ならぬ物質だね」

「いやいやいや!何言ってんですか!ケーサツ呼びますよ!」

「ふぅん。呼べば?」


こ、の、野、郎。


(わたしが出来ないとでも思ってるの!?)


甘い!確かに自分は臆病だが、それ以上に保身が強いのだ。この男を追い払う為なら電話ぐらいなんてことない。

にやにや人の悪い笑みを浮かべる男を睨み付けながら、純は鞄に手を差し込む。が、


「………あれ?」


携帯が見当たらない。

もう一度鞄の中をガサガサ漁っていると、頭上から愉快そうな笑い声が聞こえた。


(……まさか)


恐る恐る男を見上げれば、彼は口角を上げてこう言った。


「じゃ~ん。物質そのニ~」


パンパンパカパーンと、某アニメの○○型ロボット風に取り出されたそれは、まさしくわたしの携帯電話だった。
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