腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
純は、汚れた口許とテーブルをそれぞれハンカチや店用の布巾で拭った後、キッと泉流を睨み付けた。


「……何を言うかと思えば、笑えない冗談はやめて下さい」

「失礼な。僕は本気だよ?」

「尚悪いです。どうせあなた、わたしの名前も知らないじゃないんですか?なのに会ってすぐにこんな、ナ、ナンパみたいな真似っ」

「あはは、それこそ笑えない冗談だね。もしナンパするなら君みたいな地味な子じゃなくて、もっとマシな子を選ぶよ」

「地味で悪かったですね!」


くそ!やっぱり全メニュー頼んでおけば良かった。今からでも遅くないだろうか?

悶々と復讐を企む純を余所に、泉流は機嫌良くコーヒーを口に運ぶ。

どうやら、彼女は思っていることが全て顔に出るタイプのようだ。見ていて飽きないな、とカップの裏で薄く笑む。

さて、どう説得しようか。


(まぁ、どのみち結果は同じだけどね)


彼女は初対面だと思っているようだが、こちらは以前から観察させて貰っていた。そこで彼女しかいないと決断したのだ。逃がしはしない。
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