腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
「尾崎純さん」


カップを置いて静かに名を呼べば、彼女はポカンとした表情を浮かべた。なんだろう。彼女の間抜け面を見ていると、どうも加虐心がくすぐられる。

いじめ倒したくなる衝動をグッと堪え、泉流は努めて笑顔を浮かべた。


「君の名前は知ってるよ。そして君も僕の名前を知った。これで知らない仲じゃないよね?」

「ま、まぁ、そうなりますか、ね?……じゃないですよ!なんで名乗ってないのにわたしの名前知ってんですか!」

「ノリツッコミが冴えてるね」

「いや~それほどでも。ってオイ!」


言われた側から引っ掛かる純に笑いが堪えきれず、泉流は声を上げて笑った。


「あははは!おっかし!実際喋ってみて君のイメージがだいぶ変わったな。益々下僕に欲しくなったよ」

「助手から一気に降格してません!?」


そっちが本音か!と、純は頭を抱えた。駄目だ、話についていけない。


「……っ、もう一度訊ねますけど、いつわたしを知ったんですか?それに、どうしてわたしなんですか?」


これまで地味にひっそりと生きてきたのに、とんだアクシデントである。
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