くるきら万華鏡
「いいえ、何も。」


 震える声で答え、視線を教科書へと落とす。


「はい、平澤さん、コレ訳して。」


 適当に教科書の一文を指差し、有坂くんが諸井先生の口調を真似て言い、思わず私、ブッて吹き出した。


 再び有坂くんを見ると、吹き出して笑う私を見て、満足そうにニッと微笑んで『してやったり』の顔。


「多恵ちゃん、シャンプーのいい匂いする。」


 私の髪に視線を移し、有坂くんはポツリと呟いた。


 有坂くんは、思ったことが頭を介さず口から出て来てしまう病気なのかもしれない。


 それもかなり重症、入院治療をお勧めします。


 だって、あなたのその病気のせいで、この数10分で、私の心臓くん、1ヶ月分は無駄に働いているから。


 とても迷惑、これ以上酷使すると、私の心臓くんの寿命が縮まってしまう。



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