くるきら万華鏡
望まない目撃
その日の放課後、担任の穂積一郎先生に頼まれて、体育館にパイプ椅子を二脚、取りに行った。
なんでも明日、教育委員会のお偉いさんが、一郎さんの授業を見に来るのだとか。
一郎さんは、40代半ばで、見た目はちょっと強面で貫禄ありなのだけど、実際はとても気さくで、話しやすく、私は彼に頼みごとをされると、どうも断れなかった。
それをいいことに、一郎さんは、最近では、雑用はいつも私に頼むのです。
体育館へ向かって渡り廊下を一人、トボトボ歩いていると、どこからか男子数人の罵声と、それに混じるようにして、人が殴られているような、蹴られているような、物騒な音が聞こえてくる。
私は上履きのまま、音のする方へ、何故だか吸い寄せられるように向かっていた。