くるきら万華鏡
 有坂くん!


 叫びたくても声が出ない。


 とにかく助けを呼ばなきゃ。


 咄嗟に踵を返して走り出した。


「おい、待て!」


 振り向いたヤツがそう叫んで、追ってくる。


 嫌だ、怖い! 一郎さん、助けて!


 必死で渡り廊下付近まで辿り着くと、想いが通じたのか、一郎さんがそこに居た。


「おお、平澤! 椅子やっぱ三つ…」


 一郎さんがそう言う間にも私は走り続け、一郎さんの背後に回り込んだ。


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