くるきら万華鏡
 追っ手の男子が、反射的に立ち止まる。


 そして『やっべぇ』と言いたげに、顔を歪めた。


 一郎さんは、私たちのような、平凡な生徒にはとっても優しいけど、あいつらみたいなゴロツキには、めっぽう厳しくて、そして恐れられているんだ、ざまぁみろ。


「何やってるんだ?」


 一郎さんは、その男子生徒に、厳しい口調で問う。


「なんもしてねーし。」


 悪びれることなく、そいつは涼しい顔でふてぶてしく答える。


 そのやりとりを耳にしたらしく、他の仲間たちも、ぞろぞろと校舎の死角から出て来て、皆散り散りに退散した。


 有坂くんを殴っていた、最もガラの悪そうな男子は、一郎さんの横擦れ擦れをわざとらしく通り過ぎ、歩きながらも振り返ってこっちを見ていたが、地に唾を吐き捨てると、プイと前を向き直り去って行った。


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