くるきら万華鏡
「何があった?平澤?」


 不良達がいなくなると、一郎さんが急に顔の緊張を解き、いつもの優しいオッサン顔に戻って私を見た。


 どうしよう… 一郎さんに言うべきか、内緒にすべきか…


「なんでも… ないです。」


 結局、私は見え透いた嘘をついて、その後ろめたさから、一郎さんから視線を逸らしてうつむいた。


 一郎さんは、それ以上問い詰めることはせず、


「そうか、何か困ったことがあったら、必ず俺に言うんだぞ。」


 そう、微笑んで言うと、


「お前追って、もうここまで来ちゃったから、椅子は俺が持っていくわ。平澤、気をつけて帰れよ。」


 そう続けて、私に背を向けると体育館へ向かった。


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