くるきら万華鏡
 私は慌てて、まだ有坂くんが残されているだろう、さっきの校舎の死角に走って戻った。


 やっぱり…


 足を投げ出して腰を地べたに落とし、壁にもたれるようにして有坂くんはそこに居た。


 制服は泥だらけ、口元やこめかみには赤い血が付着していて、目を逸らしたくなるような痛々しい姿に、胸が締め付けられた。


 そっと近付きながら、ポケットからプチタオルを取り出し、有坂くんの傍らにしゃがんでそれを差し出した。


 有坂くんは、私に冷たい視線を投げると、私が差し出した手を、邪魔くさそうに右手で除け、その右手をそのまま壁について、難儀そうにゆっくり立ち上がった。


 壁についた右腕で体重を支えるようにして、やっとのことで立っている有坂くんを、私はどうすることもできず、しゃがんだまま見上げた。


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