くるきら万華鏡
 有坂くんは、深刻な面持ちで、伏せ目がちに私の足元を見つめ、普段あまり使わない脳ミソにお仕事させているようだった。


「手、離してよ。」


 腕が未だ掴まれたままなので文句を言うと、有坂くんは、何か思いついたように顔を上げ、そして目をキラキラさせて言った。


「わかった! 多恵ちゃん、さては…」


 気付かれた? さすがの鈍感皆人も私の気持ちに気付いたか?


「俺に奈緒を取られて拗ねてるな。」


 また得意顔…


 この筋金入りの鈍感さ、呆れて返す言葉もない。


 そして、私の左腕は、引き続き有坂くんの右手に掴まれたままなのです。


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