くるきら万華鏡
 有坂くんはそんな彼らを見渡すと、


「悪いけど… 席外してくれる?」


 苦笑しながらそう言った。


 ここは皆の教室です。


 あなたにそんなこと言う権利なんかこれっぽっちもないのです。


 誰か、おバカな彼にそう教えてやって下さい。


 だけども皆は、『ああ、そうね』って感じで、納得したように慌てて荷物を纏め、ゾロゾロと教室を後にした。


 ようやく有坂くんは、私の左腕を解放し、恐る恐る奈緒に近づいて、奈緒に向き合うようにして立った。


「奈緒、俺がなんかしたなら誤るし。だから、不満があるならちゃんと言えよ。」


 有坂くんは、声を漏らして泣く奈緒の顔を覗き込むように、その大きな体を屈めて、優しく、宥めるように言った。


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