くるきら万華鏡
 恐る恐る、様子を窺うように皆人くんを見た。


 皆人くんは、まるで他人事のようにキョトンとしている。


 バカだから、この会話の内容が、私の言葉からだけでは読めないんだろうか?


 いいや、いくらバカでもそんなはずない。


『多恵、私ね…』


「もういいよ。話は今度ゆっくり聞くから。」


 長い言い訳が始まりそうな予感がしたので、できる限り穏やかな口調を心がけてそう言い、私は電話を切った。


「だからやめとけって言ったのに。」


 皆人くんが、残念そうに言う。


 何故か自分のことよりも、私の事を気遣うような口調だった。


「皆人くんは? 皆人くんは辛くないの?」


 そんな皆人くんの態度が不思議で仕方なくて、ベッドに頬杖をつきながら私に同情の眼差しを向ける皆人くんに尋ねた。


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