舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
「イワンー。奈々がちょっと困ってるよ」


「え?ああ…ゴメン。夢中になると止まらない性格で」


「は、はぁ…」


イワンさんはそう言って頭をかいた。


昨日の印象とはがらっと違う。


カズさんはこらえきれないといった様子で声を出して笑っていた。


「昨日、僕は君のバレエしか見ていなかったんだ」


「え…?」


「第一幕が始まって、少しした後、待機している君が一人で端の方でレッスンしているのを見ていた。金平糖の精の踊りが始まるまで、ずっと」



それを聞いて、カズさんの方を見ると、微笑んでうなずかれた。


カズさんが『俺はわかってる』といっていたのはこのことだったの…?


イワンさんは私の腕をつかむと、端の方にあるパイプ椅子に私を座らせ、足を持ち上げ
た。


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