舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
「うん、明日店来てよ。待ってるから」



甘い声でそう言って、怜音は電話を切った。


「悪い」


「ううん」


パチンとケータイを閉じて、それをガラステーブルに置いた怜音はまたソファーに座りなおした。


私と少し距離を置いて。


「…シャワー、先使いな。こっち」


そっけなくそう言った怜音だったが、私の手首をつかむその手は優しかった。


リビングから続くドアを開き、綺麗なタオルとバスローブを出してくれて、なにも言わずに洗面所を出て行った。


なんか、気まずくなってしまった。


怜音も私も気付かないで、ただの経営者とスタッフの関係だったらよかったのかな。



だけど、私の気持ちはもうどうしようもないところまで来ている。


怜音のことが好き…


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