舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
「えーと…」


一人ひとり、その写真の額縁を拭きながら、顔と名前を一致させる。


ぶつぶつしゃべりながら額縁を拭いていると、肩を叩かれて振り向いた。


「何やってんの?」


「あ、おはようございます」


振り向いたところには、怜音と3人スタッフが立っていた。


怜音が立ち止まると3人も立ち止まったので、怜音は「先行って」と声をかけていた。


「…敬語」


「はッ!」


「まあ、いいや。で、何してんの?」


そう言いながら怜音は壁に背中をつけて私を見下ろした。


「掃除ついでに、みんなの名前覚えようと思って」


「ああ、それでぶつぶつ言ってたんだ」


口元にこぶしを当てながら笑っていた。


「覚えたいんだ?」


「だって、私の名前、みんな覚えてくれてるから。私も覚えたい」


「そっか。頑張れよ?」


そう言って怜音は私の髪をなでると、店の中に入って行こうとした。


重い扉を開く前に「あ」と言って振り向いて、また私に近づいてきた。


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