レクイエム<鎮魂歌>
その申し出を自分は突っぱね、家族に迷惑をかけている。
私がそれを受け入れれば父にとっても兄にとっても、母にとっても、とても得になる。
それを私は棒に振っているのだ。
「でもあの子、王子様から休みをもぎ取ってきたみたいよ?」
「そんな……!!」
「諦めなさい。フィオーラは貴女のこと心配してくれているのよ。」
絶句する私に母は彼女を言い聞かせるように言った。
「ほら、もう出発しないと。荷物は全て馬車の中よ。このまま屋敷の入口に向かいなさい。そこにフィオーラが待っているわ。」
そう言って私の肩を押す。
私が部屋を出る前に、母は私をギュウッと抱きしめた。
「気をつけるのよ?」
「……ええ、わかっているわ。」
母が言った言葉の本当の意味。
それが指す事を私は身をもって知っている。
母が心配するのも無理ないが…。