レクイエム<鎮魂歌>
「――ニカ、モニカ。」
「――ん〜?」
「起きて、早く。寝ぼけてないで!」
焦ったような兄の声。
「……兄様?どうしたの?」
ムクリと起き上がると兄がこちらを厳しい目で見ていた。
「ちゃんと目は覚めた!?外の気配を探ってみてごらん。」
言われた通りにすると、背後で馬を駆けてくる気配が複数ある。
「馬がこちらに向かって複数………けど、なんで………まさか、私達が目的!?」
「だろうなあ。数分もしない内に追いつかれるだろう。」
「そんな……!」
ならどうしろと言うのか、と兄を見ると真剣な目でこちらを見ていた。
「モニカはこの馬車の馬を使い逃げろ。」
言われた言葉に神妙に頷きスカートをまくし立て前に出る扉を開き、座って馬を操っていた兄の従者に訳を話して一頭の綱を受けとった。
「お兄様もみんな一緒よね。」
背後を振り返り兄を見て言った。
馬車を引いている馬は4頭。
馬車に乗っているのは私と兄と馬を操っている従者一人だけだ。
残りの人は宿泊先に先に行っている。
なので、この馬車に乗っている三人が馬で脱出し、残りの一頭で遅いけれど馬車を引いて囮にすれば逃げられるはず。