レクイエム<鎮魂歌>
気を失った妹を腕に抱き抱えてフィオーラは言った。
「モニカをここに残しとく訳にはいかないんだよ。」
聞こえるはずもない彼女にそう呟く。
「ビジィーラ、モニカの馬を頼む。」
ビジィーラと言う自分の従者に馬をこちらまで引き寄せてもらった。
その上にモニカを落ちないように横たえる。
「お前なら落とされるはずがないだろう。――モニカを頼んだぞ。」
前半は聞こえているはずもない妹に、後半はモニカを乗せている馬に向かって言った。
馬はモニカという部分に反応し耳を傾け自分の背中を見た。
そして了解したかのように嘶ないた。
フィオーラはそれを見て安心したようだ。
「いけ」
短く言っただけだが馬は颯爽と駆けて行った。
「よかったんですか?」
それまで黙っていたビジィーラが馬が見えなくなるのを待って、口を挟んだ。
「なんのことを言っているんだ。」
「一緒に行かなくて、と言うことですよ。」
「……ならお前が行けばよかったんだ。」
「嫌ですよ。俺はフィオーラ様の従者ですもん。」