レクイエム<鎮魂歌>
「何か近づいてきてる。」
「ええ。正確に言えば、私達に向かってくるような感じ……。この場所に向かって来ているんじゃない。」
「この気配は…………………馬だ。」
しかも、人が操っていない馬だと。
数秒後、姿が見えた。
「ヴィオラ、ネインは出そうか?」
「ん〜。どうかしら?あの子、気分屋だからね。」
「だろうな。この半年で出てきたのはたったの3回。1ヶ月に1回出てくればいい方だしな。」
気楽げに答える女に、男の方はしみじみといった風に呟いた。
「シャイなのよ。仕方ないでしょう!?」
「………なら、俺が止めるか…。」
しぶしぶという感じに呟いた男は、近づいてくる馬に集中し、駆けて来て横を通るのを待った。
が、男はあるモノを発見した。
「おい、ヴィオラ!一人が乗っている。」
乗っていると言っても気を失っているのか、馬の背で体を横になっている。
にしてもおかしい。
馬が妙におとなしすぎる。
「ねえ、見て。馬のスピードが落ちてきてる。」
彼女の言う通り、馬は彼等の元に着くときにはちょうど止まったのだ。