レクイエム<鎮魂歌>
「女の子?」

馬の上から二人で気絶している人を降ろそうとして身体の軽さに驚いた。そしてマントのフードがずれ、顔があらわになる。

「みたいだな。にしても、貴族だと思うけど、ヴィオラはどう思う?」

木の幹にもたせ掛けながら尋ねた。

ふと、先ほどこちら駆けてきた馬を見ると、綱を繋がれてもいないのに、おとなしくその場にいた。

普通はありえない。

視線を何気なく戻すと、彼女は気を失っている少女の顔をまじまじと見ている。

「この子、可愛い!!何、この白銀の綺麗な髪は!すっごい美人さんよ。」

興奮したように騒ぐ彼女に、視線を向けると、マントをのけた姿が目に入った。

確かに綺麗な少女だった。

だが、それを考えると、なおさらこんな森にいることがわからない。

「わかったから。……貴族だろうな……。」

「でしょうね。」

気を失っている少女の着ている服は控えめながらもしっかりとした作りをしており、何より質がよかった。
貴族じゃなければ、良家のお嬢様といったところか。

だが、苦労してそうだろうな、とも思った。
良家のお嬢様なれば、貴族達のように位の高い者に求婚を申し込まれれば、そう簡単には断れないだろうと。これだけ容姿が整っているのだ。
そこら辺の、無駄に地位の高い奴らが放ってはおかないだろう。
なぜだかそう思うと彼女に親しみを覚えた。

まだ目を覚ましても、話してもいないのに。

そんなことを考えた自分を自嘲気味にわらった。

「なに?いきなり…どうしたの?いきなり笑ったりして……。」

見られていたのか、ヴィオラがこちらを、なにか気持ち悪いものでも見た、といった風な表情をしていた。



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