レクイエム<鎮魂歌>
「いや、別になんでもない。ただこの少女も大変そうだろうな、と思っただけだ。」
お前にもわかるだろう、その気持ち、と問えば苦笑を含んだ相槌を打ってくる。
「ねえ、それよりもこの子どうやって起こす?」
笑っていた顔を瞬時に引き締め、少女に視線を向けて問うてきた。
そうなのだ。
男ならばビンタでも、したたか殴るなどしてどうにかしただろうが、少女なのだ。
しかも自分にこのような経験は初めてで、どうしていいのか分からない。男ならあるのだが…。ここは本当ならばヴィオラに任せた方がいいのだが、その彼女が尋ねてきているのだ。
だから尋ね返すこともできない。
「………一応ここで起こすこともないだろう。近くの屋敷に連れて行こうか?」
「それもそうね、ここらの近くならあそこがあるわね。」
うなずき返してきたヴィオラは少し、いやかなり嬉しそうだ。
この少女の身が心配だ。
屋敷に着いたら、彼女に侍女を付けるべきだろうかと思案しながらもヴィオラの返答に同意を示し、行動に移すことにした。