レクイエム<鎮魂歌>
「お母様、モニカです。」
そう言って部屋の戸をノックすると、お入りなさい、と母の声がしたので失礼します、とドアノブを回した。
部屋の扉はよく手入れされている証拠に音も無く、スムーズに開いた。
扉を開けると昔とあまり変わらない部屋の風景が見える。
壁にかけられた風景画に感じのよいテーブルや椅子、本棚などが目に入ってきた。部屋一帯はブラウンで整えられており清潔感漂う綺麗な部屋だ。
モニカの部屋とほとんど変わりない景色がレースのカーテンをかけられた窓から見える。
その窓の側に立って後ろを向いていた女性がこちらを向いた。
「モニカ、急に呼び出してごめんなさいね。」
そこに立っていた母エイシャーは本当に申しわけなさそうな表情をしている。
「大丈夫ですよ、母様。それよりどうしたんですか?」
珍しいですよねと続けた。
部屋の扉を後ろ手で閉めながら私は問いかける。
部屋をよく見渡すと部屋には自分と母だけだった。