レクイエム<鎮魂歌>
どちらに転んでも私にとっては最悪なことには変わりない。
「父様は何か言っていらしてましたか?」
そう、父デラシーネの了解をとっていないと私は屋敷を出れない。
「ええ。許可は私がもぎ取ってきたわよ。大丈夫、心配しないで。モニカを王子達が探しているようだったら言ってやるわ!娘は今別荘で療養中ですってね。」
母のこの強気な性格が私は好きだ。
温かくて安心するような、そんな感じ。
けれど、父は私を嫌っている。
きっとフローランス家の恥だと思っているに違いない。
このフローランス家は伯爵家だが、公爵家と同じくらい特別視されている。
モニカの兄、フィオーラはしっかりした人で勤勉だ。
だが、女は結婚と服の流行など、そんなことをしていればいいと言われるのだ。
女には勉強など必要ないと言われる。
だが、モニカは例外と言ってもいい。
彼女は勉強が好きなのだ。
知らないことを知りたいと思っている。
「この前いらした時もそう言って帰ってもらったわよね?」
「だってモニカは身体が弱く病弱なことで有名でしょ?嘘なんだけどね。」
そう、世間には病弱なことで有名だが、実際は私が、社交界にあんまり出たくないことと、こういう面倒事を避けるための嘘なのだ。