=寝ても覚めても=【完】
男相手に関係ない自分がドキドキとしてしまったことを誤魔化す為に、仁科は無理やり心の中で悪態をついた。
「ひぃ!・・・ナオさん、あの先生ずっと待っていらっしゃいますよ・・・もう行かれた方がよいのではありませんか」
主の必殺とも思われる微笑は、自分やあの看護婦になら利くのかもしれぬが、少女はただ怯えたようであった。
気配を消していたつもりなどないのだが、ここでもやはり、仁科の存在は無視されていたらしかった。
「ああ、そうでした。ありがとうとても参考になりました。・・・しかしあいつは桜餅の方が好きかな。よいしょ」
主は相手の態度など気にしない。
最後は独り言のように言って立ち上がった。
これで戻る気になってくれたようだ。