=寝ても覚めても=【完】

思わず言ってしまった心からの言葉に、主はニコリと微笑んだ。


「そうだね。これからはまた、ずっと一緒にいよう」


この笑顔が見たかった。

見惚れてしまっていたから、主の言葉は上の空で聞いていた。



上の空の仁科にも聞こえるほどの大きな音。

船室に長い、長い汽笛が響いた。



この汽笛は?

出航を告げるものでは?



まさか。

まだ奥方が乗り込んでいないのに、主は慌ててもいない。

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