=寝ても覚めても=【完】
「また美味しいものが届いたら参ります。それでは、みなさんお達者で」
病人に言われたくもなかろう。
仁科はそう思ったが、老人たちは笑顔を崩さなかった。
「いつもすみませんねぇ、ナオさん」
主はどうやら既にここの者の懐柔に成功しているらしかった。
主の出現ポイントの中で、確実に一番ここが病室から遠いじゃないか。
増えてしまった自分の苦労に、仁科は心からの溜息をついた。
主はご機嫌に中庭を横切って行く。
スラリと長身で、さっそうと歩くその姿はまるで大病患う病人には見えない。