=寝ても覚めても=【完】
これで尊敬する宇治方先生とは親友なのだと言うから、嫌になる。
自分はまだあの先生を目の前にすると、緊張してしまってまともに口もきけやしない。
『変わった奴だがよろしく頼む』
術後の経過も良好で、忙しい宇治方先生の代わりにこの主の世話を任されて早二週間。
真面目なことだけが取り柄の自分に初めて任された大仕事と言って良かった。
頭を下げられては嫌とは言えず、頑張ります!とあの時安請け合いしてしまった事を後悔していた。
どす黒い感情が医者に有るまじき嫉妬なのだとわかってはいても、奔放な主に振り回されるのは良い加減苦痛になってきていた。
だいたいかくれんぼの鬼など、どうして医者である自分がやらなくてはならないのか。