=寝ても覚めても=【完】

なるほど、誰か知り合いの子供にでもなにか買い与えるつもりなのだろうか。

そういうことならば納得できる。



仁科は無理やり頷きかけたが、重ねて主は聞いてもいないのに絶望的な一言を呟いた。


「早くここを出て、もう一度この身を重ねたいものだなぁ」


こいつ、・・・やはり終わっている。



この年の自分ならまだしも、主はたしか宇治方先生と同い年だと聞いた。

見目麗しい彼が、いきなり人の皮を被った妖怪のように見えた。



こちらの気も知らず主は何を思い出しているのやら、青空の下に似合わない陶然とした微笑を浮かべていた。



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