=寝ても覚めても=【完】
嘘だ、こいつは絶対可哀想だなんて思っていない。
何故ならこの自分すらそうは思っていないからだ。
宇治方先生も大して主の返事など期待していない様子で、早々に話題を変えた。
「それで浩毅(ヒロキ)だけどな?」
「うん、うちの優秀な弟ね」
主はいないことになっているはずの仁科に言った。
気配を消せていなかった事を後悔した。
「はい」小さな声で、聞いていますよということだけアピールしておいた。
秘密の話などではないらしく、宇治方先生は続けた。
「奥方の出産はさ来週になりそうだ。面倒だから、もう明日あたりから入院するらしいよ」