=寝ても覚めても=【完】
やっぱりな、またいない。
そんなこともあろうかと、覗きに来て正解だった。
『明日の朝は回診ですからね・・・』
『忘れてたことにしたらダメ?』
昨夜のあの悪戯な物言いは、存分に怪しいと思っていた。
寝床に入っても彼が明日の朝部屋にいるのかどうか心配になり、夢の中でも彼を探し、朝起きてすぐに彼の居場所が気になった。
寝ても覚めてもこの部屋の主の事ばかり。
部屋の入り口で仁科彬彦(あきひこ)は溜息をつきかけて慌てて思いなおし、これからの算段に思いを巡らせた。
10時には敬愛する宇治方先生がこの部屋に回診に来る。