=寝ても覚めても=【完】
『奴の話はあまり真面目に聞くな。それが奴との上手な付き合い方だよ』
変わった奴だがよろしく頼む、の後に宇治方先生はそう続けた。
宇治方先生の親友である上に、この病院に多額の寄付を積み上げているお金持ちの長男。
嫌われては適わないと、ガチガチに緊張して初めてきた特別対応病室の扉を叩いた。
『どうぞお入んなさいな』
とぼけた毒気のない口調に、仁科は少し拍子抜けした。
この部屋の主は、窓辺の大きな椅子にもたれて読書の最中だったようだ。
彼はこちらの目を見てニコリと笑った。
これが看護婦の言っていた『ナオさん』だ。