=寝ても覚めても=【完】
豪華な作りの部屋が並ぶ特別待遇病室の階に詰めているのはベテラン看護婦ばかり。
研修医の自分も彼女らには頭が上がらず、ここはとても苦手な場所だ。
彼もここにはいないだろう。
次に思いついたのは一般病棟の看護婦の詰め所。
開いたままの扉からそっと中を覗き込むと、忙しく動き回っている他の者の中でうら若き看護婦が一人、美しい花束を胸に抱いて頬を染めている最中であった。
その花束を昨夜目にしたのは主の病室の花瓶。
「・・君、ナオさん来てるだろう?」
ようやく彼女と口を利けると言うのに、内容がこれだとはな!
彼女は余韻に浸るようにぼんやりとしたままだった。
仁科を誰だかわかっているのかすらも怪しい。