=寝ても覚めても=【完】
主は満足気に綺麗な笑顔で頷き、仁科に鋏を渡して寄越した。
降りてくれるようでほっとした。
さらに不安顔の弥栄に鋏を戻し、
「梯子もってきますから、待ってて下さい!」
と声をかけた。
「いや、大丈夫よ?これくらい」
確かに、手も長ければ脚も長い。
登れたのだから降りるのも容易くはあるだろうが、危険に思える事を見過ごすわけにはいかない。
さて梯子はどこだ?と弥栄に聞こうと口を開いたら妙な音がしたので、仁科は再び主を仰いだ。
主の乗る太い枝がしなり、次の瞬間音を立てて根元から折れた。