=寝ても覚めても=【完】
「・・・はい」
目の前には青空を背景に背負った、心配そうな主の顔。
今日も変わらず麗しく、何よりである。
こんなに近くに顔があるのは初対面の時以来だ。
主に顔を近づけられるとどうしてもあの時の恥ずかしさが湧きあがり、仁科はわざと乱暴に主の肩を押して起き上がった。
体重をかけた左肩がピリリと張った気がした。
「・・・お薬の、時間です。お部屋に戻って下さい」
「うん」
きっと自分の顔はまた赤い。
そんなものまた見られては敵わぬと、仁科は先立って歩き出した。