=寝ても覚めても=【完】


笑み浮かべる主の意見は物騒だが、その通りだと仁科も思った。

弥栄は聞いているのかも怪しいほど真剣な表情で食べていたのだが、どら焼きを平らげてようやく主を見上げた。


「大丈夫ですよ」


にこり、と弥栄は食べかすのついた口唇を上げ微笑んだ。


「えっ!?なにが!?どこが!?」

「えっ」


そのあまりの単純な感想に、気配を消していたはずの仁科の方が早く、思わず声を上げてしまった。


事情が理解できていないとは恐ろしい。

同じ事を浩毅の前で言ったら、この少女は首を絞められるに違いない。

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