=寝ても覚めても=【完】
主の退院の日が近づいてきた。
退院しても良いと言われた翌日から、主に来客が目立って増えた。
中には異国人も混じるその連中は、主の仕事の関係者なのか皆抜け目ない目付きをしていた。
それを相手に談笑する主からもまた、手練(てだ)れの事業者の匂いがした。
退院まで待ちきれないらしい彼らはテーブルの上に書類を広げ、主はそれに頷いたり、首を振ったりして指示のようなものを出していた。
特別対応病室は、さながら特別会議室の有様だ。
元より主のそばでなにをする役割なのかわからない立場の仁科は、自然お茶汲み以外にする事がなくなった。