=寝ても覚めても=【完】
仁科はだいぶ我慢した。
しかし何日目かに堪忍袋の緒が切れた。
昼過ぎに来た数人の背広姿の男たちは、夜半になってようやく部屋を出て行った。
途中食事を持って行き、「薬は必ず飲んで下さい」と念を押した仁科に主は笑ったが、連中は話の腰を折られて露骨に邪魔そうな表情をした。
「連中は朝から晩まで何事ですか。ナオさんを病人だとわかってやってるんでしょうかね?」
主はベッドに疲れた顔を埋めていたが、怒りを含んだ仁科の声に笑って顔を上げた。
「実は病院に入る前も俺はだいぶ仕事をさぼっていてさぁ・・・家の仕事も浩毅に任せちまったし、新しくもうひと儲けしようかと企んでいるのよね」