=寝ても覚めても=【完】
企んでいる、と言った主の表情はかくれんぼ中のそれと同じで、どちらが彼の本当の顔なのやらわからなくなった。
「そんなの退院してからにして下さい」
「追い出すなよ・・・俺はお前さんと会えなくなると寂しいよ?」
そして枕から半分の顔をのぞかせ、あの必殺の微笑だ。
主は冗談なのだろうが、正直その一言は今の仁科には堪えた。
自分がどうしてこんなにあの連中にたいして苛つくのかはわかっている。
この病院と言う仁科の知る領域から、主を連れて行ってしまうのが腹立たしいのだ。
本当はここから出て行くのは患者にとって喜ばしい事なのに、それを素直に祝えない狭い心の自分も許せない。