=寝ても覚めても=【完】


確かに散歩でもしたくなるような陽気だった。

敷地内の中庭はリハビリにも使うためか公園のように整備されていて、昼時には患者でなくてもこのあたりの勤め人が愛妻弁当を広げていたりする。


見渡す限り、主の姿はない。


ではここか。

一角にある、病院よりも殺風景な建物。

朝の仕事を終えたホウキやバケツが壁に立てかけられ、長閑(のどか)に日干しされている。

病院内の雑用や清掃などをこなす元気なご老人たちの詰め所だが、最近年端もいかない女子が雇われたと聞いたから、主がその子目当てなのは大いにあり得る。


扉を叩いて開けたら、そこにいた全員がこちらを見た。

自分のような白衣の人間が近づく事は滅多にないのだろう。

そのほとんどが何事かと驚いた顔をしている。

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