=寝ても覚めても=【完】

実際同じ時期に研修医としてここに来た仲間からは、ここで主と戯れている間にずいぶん置いていかれてしまったであろう。

宇治方先生はすぐおいつけるように何とかしてやると言ってくれているが、それだって自分の努力次第だ。


主の退院した後に訪れる苦労には、溜息が出た。



「じゃあ、俺のところに来る?」

「・・・どう言った意味でしょうか」


悪戯な笑みの主に、わざと冷たく返した。

例え嘘でもそう言われるのが嬉しいだなんて、まだ医者にすらなれていない自分には言ってはいけない気がした。



主は優しいだけなのだ。

別れの気配にどうしようもなく辛そうな仁科を気遣ってくれているだけ。

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