=寝ても覚めても=【完】

『あの、さっきナオさんが退院なさるとき、私だけをお呼びになって・・・』


あの野郎、最後にこっちにも悪い癖を出して行きやがったか。



最早苦笑しか出なかった。


『そうですか、それで?』

『口止めされていたのだけど、いつも私にお花を用意して下さっていたのは仁科先生だって、最後に教えて下さって・・・・申し訳ありませんでした。私、てっきりナオさんからだと・・・』

『・・・!?』

『あの、・・もしよろしければ!今度お礼にお食事でもいかがですか?』


実にもったいないお申し出であった。

勇気を振り絞って自分に詫びに来てくれた彼女に、断わりの言葉は見つからなかった。


主は仁科の気持ちなど、とっくにお見通しであったらしい。

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