=寝ても覚めても=【完】
その中に恋しかるべき我が主の横顔があった。
睨みつける仁科に、『みつかっちゃった?』と横目で悪戯な笑みを浮かべてから、豪華な部屋の主は汚れた机に腕をついて身を乗り出した。
乗り出した方向にはやはり、老人ばかりのこの場所で一際目立つ少女が一人。
切りそろえられた前髪の下に面食らったようなあどけない顔。
可愛らしい事もないが、幼い。
あの色っぽい看護婦の次は、一体どういう趣味だ?
「弥栄、話が途中だ。それから?」
彼女は仁科と主を見比べ、どっちと目を合わす事も諦めて両手で持った饅頭に食らいついた。
みつかったのだから、あとは連れてもどるだけ。