=寝ても覚めても=【完】
話したい事や、聞きたい事がたくさんあった。
しかしそのどれから言葉にして良いものやら。
宇治方先生を目の前にして緊張することは無くなったが、何も言えなくなる癖は抜けていない。
「なぁ、仁科・・先生」
先生。
たどり着いたのは階段の一歩目にしか過ぎないのはわかっているが、この人にそう呼ばれる日が来たのは何よりも嬉しい。
感動して立ち尽くしている仁科の前に、宇治方先生は黒くて大きな鞄を置いた。
「頼みがあるんだが。俺の代わりに回診に行ってもらえないか?」