=寝ても覚めても=【完】
「え・・・」
「覚えているかな?直嗣。今日は定期回診の日なんだが・・・俺は忙しい。あんな奴に会いたくない」
覚えているどころか、忘れられなくて頭がおかしくなりそうだった。
もうあれからけっこうな時間が経つ。
彼女を腕に抱いて落ちた夢の中でも豪華な病室から消えた主を探し、彼女と同じ枕で目が覚めた時も主の行方が先ずは気になる。
そんなわけのわからない感情を持て余している自分なんかと付き合っていては、彼女の未来に差し支えてしまう。
嫌いになったわけではなく、むしろ身体を重ねる前よりもずっと彼女の事が好きになっていた。
でも、彼女といると何故か主を思い出す事が多かった。
主を忘れるためには彼女と別れるしかない、と思い詰めてしまうほどに。