=寝ても覚めても=【完】



来てしまった。


波止場には大きな豪華客船が停泊し、屋台まで出て祭りのような浮足立った雰囲気が辺りに漂っている。


大道芸人が口から放つ炎に拍手があがり、ガマの油売りの威勢の良い口上が、異国の楽器の愉快な演奏に重なっていた。


雑多で不思議な空間に、出向を待つ人々と見送りの人々が溢れかえっていた。


この中から主をみつけられるのだろうか・・・・。


しかしそれも取り越し苦労だった。

着飾った人々の中で、白衣姿の仁科は余りに目立ち、発見されたのは探していたはずの仁科の方であった。


「ここだよ、お医者さん」

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