=寝ても覚めても=【完】
いきなり後ろから抱きすくめられ、硬直した。
振り向くまでもなく、すぐ近くにあるのは久しぶりなのに変わらない悪戯な主の顔。
「ナオさん...」
「待ってた。もうすぐ出航なんだ。客船ってのったことある?俺初めてなんだよね」
再会の言葉もなく、主は仁科の手首を掴んで歩き出した。
途中、一角で荷物番をしていたらしき少女の前にきた。
彼女は片手に現実ほどの赤子を抱え、片手で器用に屋台の焼き鳥を頬張っていた。
「お待たせ。行くよ、七海」
「!?待ってくだせぇ、ご主人様!これ食べ終わってから!」
「中でもっと美味いもの頼んでやるから。ほら、急いで」