=寝ても覚めても=【完】

いきなり後ろから抱きすくめられ、硬直した。


振り向くまでもなく、すぐ近くにあるのは久しぶりなのに変わらない悪戯な主の顔。


「ナオさん...」

「待ってた。もうすぐ出航なんだ。客船ってのったことある?俺初めてなんだよね」


再会の言葉もなく、主は仁科の手首を掴んで歩き出した。



途中、一角で荷物番をしていたらしき少女の前にきた。

彼女は片手に現実ほどの赤子を抱え、片手で器用に屋台の焼き鳥を頬張っていた。


「お待たせ。行くよ、七海」

「!?待ってくだせぇ、ご主人様!これ食べ終わってから!」

「中でもっと美味いもの頼んでやるから。ほら、急いで」

< 93 / 102 >

この作品をシェア

pagetop