=寝ても覚めても=【完】

隣室に見えるベッドは豪華だったが、限られた空間にこうしていると、病室での主を思い出す。


彼はここでも主の有り様で、何年もそうやっていたかのように、肘掛けの上の手に顔をのせて微笑んだ。


「久しぶりだねぇ、仁科。すっかり立派な医者じゃないか」


あなたに会うために必死だったなどとは言えない。


「いえ、ナオさんも...お元気そうで何よりです」


だからこんな当たり前の言葉しか出てこなかった。




メイドは赤子を降ろして巨大なベッドにダイブし、跳ねながら喜んでいる。


「七海!こちら仁科さん。宇治方の病院にいるときに、とても世話になったんだ」

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